光合成の誘導期[induction period of photosynthesis]

  光合成が始動し, CO2固定速度が定常値に達するまでの期間を光合成の誘導期という.この誘導期が生じる理由として3つある.第一に,葉緑体レベルでは還元的ペントースリン酸回路チオレドキシンにより光活性化を受ける酵素群がこの期間に活性型に変換されるためである.第二に, Rubiscoがこの期間に活性化される.暗黒下に置かれた葉緑体中のRubiscoは,その反応の阻害剤カルボキシアラビニトール-一リン酸(CA1P)と結合して不活性化状態にある.光が照射されると, Rubiscoアクチベースによる阻害剤の除去,さらにRubisco活性中心のカルバミル化によりRubiscoは活性型へ変換される.これによりCO2固定速度が上昇する.第三に,生葉レベルではこの期間に気孔が開き, Rubiscoの基質CO2が葉緑体へ拡散する.気孔開閉に与える光の効果は孔辺細胞細胞膜プロトンATPaseを活性化し,さらにATPの形でエネルギーを与えることにある.この3つの機構の中で最も遅い反応は気孔開閉である.クロロフィル蛍光の誘導期現象も光合成の誘導期における変化を反映している。

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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:43:52