光増感剤[photosensitizer]

  光化学反応において基質以外の物質で初めに光を吸収して励起され,その励起エネルギーをエネルギー移動や電子移動で基質に渡すことによって基質の反応を起こさせるとき,この物質を光増感剤という.元来は,銀塩写真で用いられた用語であるが,現在は上述のように広い意味で使用される.光増感剤は一時的に化学変化を受けることはあっても再生され,消費されることはない.
 エネルギー移動による光増感剤としては,たとえば,液相の光化学反応で,ベンゾフェノンなどの種々の光増感剤が光励起により三重項状態となり,基質のオレフィンのシス体およびトランス体の三重項状態へのエネルギー移動によりシス-トランス異性化か容易に起こることが知られている.電子移動による増感剤としては銀塩写真において,感光剤であるハロゲン化銀は青ないし紫外光しか吸収しないので,可視部に吸収をもつシアニン色素,メロシアニン色素を吸着させてそれぞれの波長の光により光電子をハロゲン化銀に伝達し潜像を形成させる.
 色素増感太陽電池においては,太陽光の紫外光のみしか吸収できないTiO2などの酸化物半導体光電極の表面にRu(dcbpy)2 (NCS)2 (dcbpy=4,4'-dicarboxy-2,2'-bipyridine)などのルテニウム錯体増感色素を化学固定することにより,光電極に可視光応答性をもたせることが行われている.これにより,太陽光の可視光全域の光を色素(光増感剤)が吸収し,励起され,色素から電子を半導体の伝導帯に注入することが可能となり,効率よい光電変換が可能となった.

関連項目


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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:43:29