光情報伝達因子[light signal transduction factor]

 植物の主要な光受容体としては,赤/遠赤色光受容体のフィトクロム(PHY),青色光受容体クリプトクロム(CRY)およびフォトトロピン(PHOT)が知られている.フォトトロピンの担う光応答が光屈性葉緑体光定位運動気孔などであるのに対し,フィトクロムおよびクリプトクロムが担う光応答は幅広く,葉緑体の発達,光合成関連遺伝子群の活性化,表皮細胞の発達,細胞伸長抑制,アントシアニン合成,花芽形成制御などのいわゆる光形態形成全般を両者が重複して担っている.
 光受容体の下流に位置する光情報伝達因子は光受容体特異的な応答を担うものと受容体特異性のない光応答を担うものとに大別される.シロイヌナズナより同定さわている前者に属するものとしては, PIF3を代表として10因子ほど同定されており,後者に属するものとしては, COP9シグナロソーム(複合体), COP1, DET1, HY5など15因子ほどが知られている. COP1, COP9シグナロソームは光情報の負の制御因子であり,タンパク質分解に関与すると考えられている.上述の30個近い因子のうちほとんどすべては恒常的あるいは条件的な核タンパク質であり,したがって光情報伝達の大部分は核内で行われていると考えられる.
 光シグナルにより活性化される遺伝子としては,光合成や光呼吸に関わる因子のみならず,デンプン合成,タンパク質合成,解糖系TCA回路,細胞壁合成,クロロフィル/ヘム合成,フェニルプロパノイド合成に関わる遺伝子群がある.また,光シグナルにより抑制される遺伝子としては暗誘導遺伝子がある.概日リズム,そしてオーキシンジベレリンに関わる情報伝達系が光情報伝達系と相互作用し,総体として非常に複雑な情報伝達網を形成しているものと推測されている.

関連項目


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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:45:44