光散乱[light scattering]

 光が粒子などにあたると電子を振動させ,その電子が二次的な光を放射する.これが光散乱である.光が空気中の微粒子により散乱を受けて見えるチンダル現象も光散乱の一種である.たとえば,夜空でサーチライトの光のすじが見えるのは空気中の微粒子により散乱を受けているためである.また,入射光の波長よりも小さい高分子などの粒子による光散乱はレイリー散乱と呼ばれている.この散乱光の波長は入射光の波長と等しい.粒子の屈折率が溶媒などの媒体のそれと等しい場合には,散乱光は非常に弱くしか観測されない.この散乱光の強度は,散乱角(入射光の方向)にも依存する.粒子のサイズと同程度の波長の強力な光(シンクロトロン放射光など)を用いるX線小角散乱は,分子の動的な構造変化を追跡するために利用される.
 光合成の分野においては,葉緑体懸濁液に光を照射したときに生じる光散乱の変化(通常直角散乱)から,葉緑体が収縮・膨張する過程を追跡することができる.また、細胞や組織などの多くの生体試料は溶液にはならず懸濁液になるため,散乱が大きく,その吸収スペクトルを測定するためには,積分球などにより散乱光を光検知部位に取り込む工夫が必要となる.

関連項目


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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:43:33