富栄養化[eutrophication]

  湖沼の水質状態の変化に関する用語.生成当初の湖沼では水中の窒素・リンなどの栄養元素が少ないため生物生産が低いが,長い年月を経て次第に集水域からの流入堆積や沿岸植生の発達で水中に栄養塩類が蓄積して高い生物生産を可能とする水質となること.この遷移過程を富栄養化と呼ぶが,近年では人為的原因で富栄養化が著しく速く進むので,環境問題の用語として使われることが多い.富栄養化すると植物プランクトンの光合成生産量と現存量が高くなり,水の透明度が低下する.富栄養化が過度に進行するとアオコや赤潮の発生がひき起こされ,それらの有機物が水中や湖底で分解し,深部で溶存酸素が消失する.富栄養化が進行する以前の湖沼は貧栄養~中栄養湖と呼ばれる.富栄養の語は現在では,海域や土壌の状態を示す場合にも使われる.海洋分野では光合成生産や魚類生産が相対的に高い水域を富栄養海域と呼ぶことがある.


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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:42:52