水生CAM植物[aquatic CAM plant]

  沈水中でベンケイソウ型有機酸代謝(CAM)により二酸化炭素固定を行う水生植物.従来, CAM型光合成は乾燥ストレスに対して適応進化した植物の生理機能と考えられてきた.しかし,水生CAM植物の発見によりCAM発現のトリガーは低二酸化炭素環境であり,CAM型光合成はC4光合成と同様に光呼吸の抑制機構として機能していることが明確になり,最近のCAMについての認識に変革をもたらした.水生CAM植物は今のところシダ植物リンボク目ミズニラ科のミズニラ属と被子植物CrassulaLittorella,SagittariaVallisneriaの5属に認められている.これらの植物の多くは,季節により一時的に生じたプールや水底が粘土や花崗岩でできた貧栄養型の高山湖に生育するが,そのほか潮の影響を受ける河川岸の水中にもみられる.水中葉ではほとんど気孔を形成せず,水中の二酸化炭素は表皮を介した拡散や根からの吸収により夜間に取り込まれる. KeeleyとBush (1984)は水中の二酸化炭素濃度とIsoetes howelliiの二酸化炭素吸収の日変化を調査し,水中でのCAMは溶存炭素に対する競合を回避するための適応機構であることを示した.なお, I.howelliiの水中から空中へ出た葉あるいは陸生個体はC3光合成を営む.

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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:45:30