活性酸素種シグナル[reactive oxygen species (ROS) as cell signal]

 植物の生理反応のシグナルとして活性酸素種が機能する場合をいう.シグナルとして機能する活性酸素種は過酸化水素(H2O2)とスーパーオキシド(O2-)である. H2O2は,オーキシンやアブシジン酸などの植物ホルモンの*セカンドメッセンジャーとして機能し,重力屈性や耐病性応答,気孔開閉などに関与する.エリシター応答では植物ホルモンを介さないで活性酸素種が生成し,シグナルになる場合もある.強光などで不可避的に生じるO2-やH2O2も環境変化に対する適応応答のシグナルとして機能する.O2-のシグナル伝達経路の詳細は不明であるが,O2-を生成するメチルビオローゲン(パラコート)で発現誘導されチオールで抑制されるシスエレメントがイネの銅亜鉛スーパーオキシドジスムターゼ遺伝子のプロモーター領域に存在する.ストレス応答性のシスエレメントをもつGST6やHSP18.2などの遺伝子で, H2O2はMAPキナーゼ(MAPK)カスケードを介して遺伝子発現を制御する. H2O2アブシジン酸のセカンドメッセンジャーとして機能する場合,抑制因子であるABI2のホスファターゼ活性をグルタチオン共存下で阻害し,リン酸化経路による情報伝達を制御する.それ以外にもH2O2で発現が変化する遺伝子には,強光や乾燥,低温,傷害応答に関与する遺伝子や概日リズムの制御に関わるCCA1などが知られている. H2O2がシグナルとして生理的な応答を促す濃度は,障害をもたらす濃度に比べ数桁も低く,そのためシグナルとなる活性酸素種の生成量や細胞,組織内での生成場所は,活性酸素種の消去システムとともに,厳密に制御されていると考えられる.

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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:43:13