炭水化物の分配[carbohydrate partitioning]

  ソース葉の光合成によって生成した炭水化物は根,未成熟葉,子実などの様々なシンク器官へと転流され利用・蓄積される.通常,シンク器官は同時に多数存在し,それらが限られた光合成産物を奪い合っており,結果的に光合成産物が様々な割合で多数のシンクに分配されることになる.この炭水化物の分配割合は植物の生育ステージや環境要因などにより変化する.たとえば生育初期の植物では炭水化物のほとんどが新しい葉や根をつくるために使われるが,生育が進むと子実やイモなどへの分配が増大する.また,多くの植物は高窒素条件で栽培すると茎葉への炭水化物分配が高まることが広く知られている.
 こうした生育や環境要因に伴う分配比率の変化がどのようにして生じるのかは不明な点が多いが,複数のシンク間の競合関係における分配比率を説明する要因として,シンク強度(sink strength,シンク能ともいう)という概念がある.シンク強度はシンク器官が同化産物を引きつける力を意味し,シンクサイズ(sink size)とシンク活性(sink activity)との積として定義される.シンクサイズはシンク細胞の数と大きさ,またシンク活性は転流物質のアンローディングとその呼吸などによる利用,貯蔵物質合成の各活性の総体として考えることができる.シンク強度が大きい器官ほど多くの炭水化物が分配されると考えられ,これに基づいて説明可能な現象は多いが,シンク強度の分子的実体には不明な点が多い.このほか,光合成で固定された炭素がショ糖あるいはデンプンにどのように分配されるかということを炭素の分配と呼ぶ.これにはショ糖リン酸シンターゼが重要である.

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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:42:56