相転移(脂質の)[phase transition, lipid]

  単一の脂質成分から成る脂質二重層において,液晶相とゲル相の2つの状態間で起こる転移をさす.ジパルミトイルホスファチジルコリンの場合, 41.5℃で相転移が起こり,この温度以上では液晶状態,以下ではゲル状態をとる.転移が起こる温度を相転移温度という.この相転移温度は,脂質の極性基の部分や脂肪酸に依存し,脂肪酸の鎖長が長くなると高くなり,不飽和度(二重結合の数)が高くなると低下する.生体膜の基本構造である脂質二重層は多成分系であるために,明瞭な相転移はみられないが,温度が低下すると液晶相の一部がゲル化して液晶相の中にゲル相が混在する相分離状態となることがある.脂質二重層が相分離状態になると,生体膜の透過性が高まり,膜を介した浸透圧やイオンのバランスを正常に保つことができなくなる.この相分離によって生体膜の機能が損われることが低温障害の一つの原因であると考えられている.

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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:43:48