葉[leaf]

  高等植物のもつ枝に側生する器官.一般には扁平であるが,サボテンのとげのように針状のもの,多肉性(→多肉植物)のものなど,形態は多様である.葉は1層あるいは多層の細胞層から成る表皮をもつ.表皮の表面は高級脂肪酸と高級アルコールのエステルである「ろう(wax)」と不飽和度の高い脂肪酸類の重合物質クチン(cutin)から成るクチクラ(cuticle)で覆われているので, CO2, O2,水蒸気などのガスを通しにくい.ガスは,主に,表皮1 mm2当たりに数百個存在する気孔を通って葉に出入りする.気孔がよく開いている場合には,気孔開口部の面積の総和は葉面積の0.5~2%程度になる.多くの植物では,表(向軸)側表皮よりも裏(背軸)側の表皮に多くの気孔があるが,スイレンなどの浮水植物の気孔は向軸側表皮だけにある.裸子植物および被子植物の表皮細胞は発達した葉緑体をもたないが,シダ植物は表皮細胞にも発達した葉緑体をもつ.また,いずれの植物も孔辺細胞は,葉肉組織の葉緑体よりも小型の葉緑体をもつ.
 葉における主な光合成の場は,発達した葉緑体をもつ葉肉組織である.双子葉植物の葉肉組織は柵状組織海綿状組織とに区別できる.背腹葉(表裏のはっきりした葉)では,表側に柵状組織,裏側に海綿状組織が分化する.ユーカリ属の懸垂葉やハコヤナギ(ポプラ)属の直立葉では,柵状組織が葉の両側に発達し,それらに挟まれて海綿状組織が存在する.イネ科植物の葉肉組織には,表面が入り組んだ有腕細胞(armed cell)がある.
 葉肉の構造は,生育環境の光や水分の影響を受けて変化する.強い光を受ける陽葉のほうが陰葉よりも厚い.個々の細胞のサイズは,水分の多い場所に見られる中生葉よりも乾燥の厳しい場所に見られる乾生葉のほうが小さい.また,環境や齢によって葉の形態が異なることも知られている(異形葉).
 細胞間隙は,湿度がほぼ100%の空気で満たされている.葉肉細胞表面が細胞間隙と接している総面積の葉面積に対する比(葉肉表面積あるいは葉肉面積比,Smes.またはAmes/Aと略記される)は5~70である.陽葉は陰葉よりもSmesが大きく,乾生葉は中生葉よりもSmesが大きい.
 維管束(葉脈)は,葉に水分や無機栄養を供給する木部と,有機物の転流を担う篩部とから成り立っている.葉脈は,柔細胞または厚壁細胞から成る維管束鞘に囲まれている. 3植物の維管束鞘細胞には,発達した葉緑体はないが,C4植物の維管束鞘細胞には発達した葉緑体がある.細い葉脈は,その末端(脈端)に至るまで,柔細胞から成る維管束鞘に包まれている.脈端の維管束鞘柔細胞は仮導管に分化することもある.
 維管束鞘から上,または下,あるいは両側の表皮に延びた維管束延長部をもつ植物もある.維管束延長部は葉緑体を含まない厚壁細胞または柔細胞によって成り立っている.維管束鞘上下に維管束鞘延長部があると,細胞間隙のガスが水平方向に拡散しない.上下に延びた維管束鞘延長部をもつ葉を異圧葉(heterobaric leaf),もたない葉を等圧葉(hom(e)o-baric leaf)と呼ぶ.
 シダ植物では,生殖器官を分化させる胞子葉と分化させない栄養葉が分化する場合と,これらの分化が明瞭でないものとがある.コケ植物などの扁平な器官は葉状体と呼ばれる.

関連項目


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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:43:36