葉緑体のアミノ酸合成[amino acid synthesis inchloroplast]

  植物でのアミノ酸合成は主に葉緑体(色素体)内で行なわれるが,それらの出発起点はGS/GOGAT回路によるグルタミン酸の合成である.合成経路は個々のアミノ酸の炭素骨格由来の違いから6種類に大別できる.
 ①プロリン,アルギニン,グルタミンはグルタミン酸から合成され,2-オキソグルタル酸由来の炭素骨格をもつ.グルタミン酸はアミノ酸のみならずクロロフィル,ヘム合成の出発物質でもある.②アスパラギン酸はグルタミン酸とオキサロ酢酸からアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼにより合成され,それを起点にアスパラギン合成酵素,アスパラギン酸キナーゼなどの働きによりアスパラギン,スレオニン,リジン,メチオニンが合成される.アスパラギン酸に由来するアミノ酸合成は,出発酵素に対する最終生成産物のフィードバック阻害機構により厳しく調節されており,アスパラギン酸キナーゼはリジン,スレオニンにより強い阻害を受ける.イソロイシンはスレオニンをいったん脱アミノしたのち,最終的にグルタミン酸のアミノ基を受け取って生成する.③ピルビン酸とグルタミン酸からアラニンアミノトランスフェラーゼなどを経てアラニン,バリン,ロイシンが合成される.この経路においても最終生成物のバリン,ロイシンはアセト乳酸合成酵素をフィードバック阻害により調節している.④芳香族アミノ酸の前駆体はホスホエノールピルビン酸とエリスロース4-リン酸であり,シキミ酸経路を経てトリプトファン,チロシン,フェニルアラニンが合成される.⑤ヒスチジンはリボース5-リン酸由来の炭素骨格をもつ.⑥光合成細胞での光呼吸で生ずるホスホグリコール酸はグリシン,セリン合成の出発基質となり,セリンからシステインが合成される.
 アミノ酸合成経路は除草剤の標的にもなっている.特にバリン,ロイシン,イソロイシンの生合成経路は植物と微生物のみに存在することからアセト乳酸合成酵素の阻害剤(クロロスルフロンなど)が除草剤として利用されている.シキミ酸経路の5'-エノールピルビニルシキミ酸-3-リン酸(EPSP)合成酵素の阻害剤(グリホセート)も除草剤として利用される.上述の各アミノ酸代謝経路の遺伝子発現は無秩序に制御されているのではなく,1つのアミノ酸が欠乏状態になった場合には,そのアミノ酸の合成系のみならず,その他の合成系も一斉に正の調節を受けることが知られており,アミノ酸合成の一般制御と呼ばれる.

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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:42:43