葉緑体へのタンパク質の移行[chloroplast proteinimport]

  葉緑体タンパク質の大部分は核ゲノムにコードされており,細胞質ゾルで合成された後,タンパク質自身に書き込まれた局在化シグナルに従って葉緑体に移行する.細胞質ゾルで合成されたタンパク質が葉緑体に翻訳後移行するためには,細胞質ゾルで凝集したりせずに,移行可能な状態に保たれる必要がある.このためには細胞質ゾルのシャペロンが重要な働きをしている可能性があるが,詳細は不明である.
 葉緑体の外包膜内包膜には各々TOCTICと呼ばれるトランスロケーター(膜透過装置)が存在し,葉緑体タンパク質の局在化シグナルの認識と,葉緑体タンパク質の包膜透過を担う.一般に包膜通過の過程にはGTPとATPが必要である.TOCにはToc34, Toc159という2つのGTP結合タンパク質がサブユニットとして含まれており,葉緑体外包膜への結合時,おそらく局在化シグナルの認識ステップにGTPが必要であると考えられている.TIC に関しては、多くの因子が候補として見出されていたものの、その実体は長らく不明であったが、Tic20を中核因子とするTIC複合体が精製されその全構成因子が同定されている。
 ATPは,おそらく葉緑体タンパク質が包膜を細胞質ゾル側からストロマへと一方向的に通過する駆動力を提供するために必要である.これらの駆動力は,膜間部やストロマの分子シャペロン、特にストロマの葉緑体Hsp70やHsp93(ClpCとも呼ばれる)によって担われているとの説がある.
 チラコイドタンパク質の場合は,ストロマに移行した後,チラコイド膜への局在化シグナルに従って,チラコイドに移行することになる.葉緑体タンパク質の包膜への移行経路はまだ一部のタンパク質についてしか調べられていない.

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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:42:55