葉緑体Hsp60[chloroplast Hsp60]

  葉緑体内には,その進化的起源がシアノバクテリアに近い原核生物だったことを反映して,原核生物時代のシャペロンが保存されている.大腸菌などの原核生物の細胞質ゾルにはGroELとGroESから成る分子シャペロンHsp60/Hsp10ファミリーのタンパク質(シャペロニン)が存在し,タンパク質の高次構造形成などに関与している.葉緑体のストロマにはGroELホモログとしてHsp60ホモログであるCpn60が存在する。そもそもシャペロニンという名称は、もともとは、葉緑体内でRubiscoオリゴマーの形成を助ける因子に関する研究に端を発している。Cpn60には多くのアイソフォームが存在しており、大きくは、Cpn60α, Cpn60βに分けられるが、実際はこれらが組合わさったヘテロオリゴマー(14量体?)を形成している.葉緑体のストロマにはHsp10 (GroES)ホモログとしてCpn21が存在する事が知られている.興味深い事にCpn21はGroESが2つ直列に繋がった構造となっている.Cpn21とは別にGroES1つ分に相当するCpn10も葉緑体ストロマに2種類存在する事が分かっている。Cpn21とCpn10 もヘテロオリゴマーを形成するという。すなわち、葉緑体のシャペロニンは、ヘテロなCpn60オリゴマーとヘテロなCpn21/Cpn10オリゴマーの多様な組み合わせにより、多様な基質タンパク質に対応しているのかもしれない。実際、特定のCpn60アイソフォームのノックアウト変異の組み合わせが、ある葉緑体タンパク質の生合成に特異的に影響を及ぼす例が知られている。


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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:45:25