門司と佐伯のモデル[Monsi-Saeki model]

  門司正三と佐伯敏郎が1953年に発表した群落光合成のモデル.群落(葉群)内部の光環境の勾配と個葉の光-光合成曲線を組み合わせることによって,ある光強度のもとにある群落の光合成速度を表した数理モデル.群落光合成速度を数式によって予測することが可能になっただけでなく,群落の光合成物質生産がどのように物理学的・生物学的要素の影響を受けているかを理解することに大きく貢献した.
 群落内部の光強度Iは,ランベルト-ベアの法則を応用し,以下の式で近似される. I=I0 exp (-KF)

 ここでI0は群落直上に降り注ぐ光強度,Fは積算葉面積指数(群落の上部から積算した葉面積を土地面積で除したもの),Kは比例定数であり,減光係数(吸光係数)と呼ばれる.Kは群落内の葉の空間配置に依存し,最も大きい影響を与えるのは葉の傾斜角である.垂直的な葉ほどKが小さい.この式からFの位置にある葉が吸収する光量を計算し,光-光合成曲線(門司と佐伯は直角双曲線を用いた)から葉の光合成速度を計算した.さらに,すべての葉の光合成速度の和を群落光合成速度とした.現在では多くの改良が加えられ,直達光・散乱光成分の区別,群落内の個葉の光合成特性の違い,光以外の環境要因の影響などを組み込んだ様々なモデルが提案され,植物群落生産の予測に使用されている.
 群落光合成モデルから,Kや群落の葉面積指数などの要因が群落光合成速度にどのような影響を与えるかを予測することができる,葉面積指数が増加するにつれて群落光合成速度が増加するが,ある程度以上になると減少する.群落光合成を最大にする葉面積指数を最適葉面積指数と呼ぶ.最適葉面積指数はKによって異なり,Kが小さいほど最適葉面積指数は大きい.また,葉面積指数が最適なときの群落光合成速度はKが小さいほど高い.これらの予測は農業生産の向上に寄与した.

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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:42:58