C/N比[C/N ratio]

  生物体に含まれる,あるいは生物体起源の土壌有機物に含まれる炭素と窒素元素の重量比のこと.陸上生態系における高等植物のC/N比は5から100程度と幅広く,タンパク質を多く含む葉で低く,木質化した茎や根ほど高くなる.また,草本植物では木本植物より低い傾向がある.植物体のC/N比は窒素利用効率の指標でもあり,この比が高いほど植物が有機物生産のために窒素をより効率的に利用したと見なすこともできる.植物のC/N比は陸上生態系全体の窒素循環一次生産力にも影響を与える.たとえば,大気中の二酸化炭素濃度が上昇すると,光合成が効率的に行われるようになり,植物体中のC/N比が上昇する.このような高いC/N比の植物遺体は、土壌微生物に分解されにくく,また分解された窒素の大半が土壌微生物に同化されてしまうため,土壌中の窒素の無機化速度は低下する.このために,植物が吸収できる無機窒素が減少し, Rubiscoなどの光合成に関与する酵素が十分合成できなくなる可能性がある.このように,二酸化炭素濃度が上昇しても最終的には光合成速度の上昇がある程度抑制されるという負のフィードバックが, C/N比の変化を介して起こりうる.


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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:45:37