紅色細菌の光化学反応中心の一次電子供与体のうち,バクテリオクロロフィルaを色素成分とするものは870 nm 付近にQy吸収帯のピークをもち, P870と呼ばれる.2分子のバクテリオクロロフィルaが平行二量体構造をもち,結晶構造が明らかとなっているRhodobacter sphaeroidesでは,LサブユニットのHis173とMサブユニットのHis202がそれぞれのバクテリオクロロフィル分子の中心Mgイオンに配位しており, Mg-Mg間の距離は約8Åである. P870は,光吸収または励起エネルギー移動によって生じた最低励起一重項状態から約3ピコ秒で電荷分離反応を起こし,バクテリオフェオフィチン分子を還元する.自らはラジカルカチオンとなり,可溶性のシトクロムc2または反応中心結合型シトクロムを酸化する.約500 mVの酸化還元電位をもつ.