#freeze
*紅色細菌の反応中心[purple bacterial reactioncenter] [#y7b6be62]
  [[紅色細菌]]の[[反応中心]]は,機能的には他の光合成生物の反応中心と同様に,[[バクテリオクロロフィル]]類と[[カロテノイド]]類から成る[[アンテナ色素]]系からの励起エネルギーを利用して(または直接光を吸収して)[[初期電荷分離>初期電荷分離反応]]をひき起こし,ひき続く[[電子伝達系>光合成細菌の電子伝達系]]を駆動させる色素-タンパク質複合体である.反応中心は通常,[[Lサブユニット]](約31 kDa), [[Mサブユニット]](約35 kDa), [[Hサブユニット]](約28 kDa)およびCサブユニット(約45 kDa, [[反応中心結合型シトクロム]])の4サブユニット(組成比は1:1:1:1)より構成されているが,Cサブユニットを欠く菌種も知られている.光合成生物の反応中心として最初に,また膜タンパク質複合体としても最初のものとして1985年にDeisenhofer,Michelらによる[[X線結晶構造解析]]により詳細な構造が決められた.基本構造は[[光化学系Ⅱ反応中心]]と相同であることが知られているが(L,Mサブユニットと光化学系Ⅱ反応中心の[[D1>D1タンパク質]], [[D2タンパク質]]がそれぞれ相同),[[酸素発生]]系をもたない点は大きな相違点である.&br; 補欠分子族として[[バクテリオクロロフィル]]を4分子,[[バクテリオフェオフィチン]]2分子,[[キノン]]2分子,[[非ヘム鉄]]1原子,[[カロテノイド]]1分子を含む.バクテリオクロロフィルのうち2分子は[[スペシャルペアクロロフィル]]([[P870]], [[P960]]などと呼ばれる)で,ペリプラズム(細胞周辺腔)側に位置し,これと細胞質側の2つのキノンに挟まれた非ヘム鉄を結ぶ軸を中心として2回対称状に残りのバクテリオクロロフィル2分子(アクセサリークロロフィル,B800,B850などと呼ばれる),バクテリオフェオフィチン2分子およびキノン2分子が配置されている.励起スペシャルペアクロロフィルからの電子はLサブユニットに結合するバクテリオフェオフィチンを経て,Mサブユニットに結合する[[Q&subsc(A);キノン電子受容体>QAキノン電子受容体]]へ移動し,最終的にLサブユニットに結合する[[Q&subsc(B);キノン電子受容体>QAキノン電子受容体]]を還元する.Q&subsc(A);は種により[[メナキノン]]または[[ユビキノン]]であるがQ&subsc(B);はユビキノンである.[[一次電子受容体]]として働くバクテリオフェオフィチンが存在する側(Lサブユニット側)をAブランチと呼ぶ.カロテノイドは電子伝達をしないMサブユニット側(Bブランチ)の[[アクセサリークロロフィル]]を外側から取り巻くように存在し,スペシャルペアに生じた三重項状態をアクセサリークロロフィルを経由して解消していると考えられている.なお,反応中心としては[[バクテリオクロロフィル'''a'''>バクテリオクロロフィルa]]または[[バクテリオクロロフィル'''b'''>バクテリオクロロフィルb]]のほかに,中心金属として亜鉛原子を含む[[亜鉛-バクテリオクロロフィル'''a'''>亜鉛-バクテリオクロロフィルa]]が機能している場合も知られている.反応中心タンパク質の遺伝子は[[パフ('''puf''')オペロン>パフ(puf)オペロン]]と[[プー('''puh''')オペロン>プー(puh)オペロン]]に存在しており,前者にはL, M, Cサブユニットの遺伝子がこの順に並んで存在し,後者には紅色細菌に独特と考えられるHサブユニットの遺伝子が含まれている.


** 関連項目 [#if72ced0]
-[[光合成の励起エネルギー移動]]
-[[初期電荷分離反応]]
-[[光合成細菌の電子伝達系]]
-[[蛍光の消光]]

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