第49回「朝型と夜型」

朝型と夜型

 最近いろいろな大学に行って驚くのは、キャンパスや建物がきれいなことです。昔通った駒場のキャンパスに行くと、異臭の漂う駒場寮があった辺りには新しい建物が建ってイタリアントマトが入っていますし、フレンチの店などもキャンパス内にあって、昔とは雲泥の差です。どこのお金持ち大学かと見まがうばかりです。

 昔の大学の建物といえば、たいていおんぼろと相場が決まっていました。大学に入って最初の定期試験の時のことです。いつもの講義で好きなところに座るのですが、試験の時ばかりは学生証番号順に指定の席に着かなければなりません。ところがしばらくすると、一人の学生が手を上げて「ここは雨漏りがしているので、席を変わってもよいでしょうか」と発言しました。確かに天井からぽたぽた水が垂れてきています。高校から大学に入って半年、天下の最高学府がこんなものかと強い印象を受けたものです。

 僕らの年代はベビーブーム世代の谷間で人口が少ないのですが、その後は人口の増加と進学率の上昇によって学生数がどんどん多くなりました。学生の多い大学では、天井の高い昔の建物の利点を生かして中二階を作って机を置いて学生を収容したとか、研究室を早出と遅出で時間を変えて二交代制にして実験をしていた、などという話がよく聞かれました。研究機器を買うのは、ある程度のお金があれば可能ですが、建物はそうそう簡単には建てられないので、いつの時代でもスペースは大きな問題になります。

 もっとも、スペースの問題がないにもかかわらず二交代制になってしまうというのも、昔からよく聞く話で、どの研究室にも、お昼前にはめったに見かけることはないけど、夜中まで実験をしているという昼夜逆転型の学生がいたものです。僕はどちらかというと朝型で、しかも二十代までは一日9時間睡眠をとっていましたが、それでも、たまに深夜に実験をすると、機械は使い放題、周りに人がいないから気も散らないので、仕事が進みやすいとは感じました。我が家でも妻は夜型で、家でも、日付が変わっても仕事をしていることがほとんどで、仕事が終わると今度は午前1時、2時にビオラの音が聞こえてきたりします。その代わり、僕が朝起きてカーテンを開けると、太陽がまぶしいだの、カーテンを開ける音がうるさいだの、不満たらたらです。太陽が出ている間はカーテンを閉めて寝ておいて、夜中になると電気をつけて仕事をするなど、地球温暖化が問題になっている時代に許されることではない、とこんこんと説いて聞かせるのですが、馬の耳に念仏です。人間も、さかのぼると夜行性の生物から進化したという話がありますから、妻なども太古の祖先の性質を維持しているのかもしれません。でも、そうであれば、電気をつけずに暗い中で仕事をしてほしいものです

2014.4.7(文:園池公毅/イラスト:立川有佳)
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