過去の分類学では,光合成細菌は生化学的・形態学的な特徴により,紅色非硫黄細菌,紅色硫黄細菌,緑色硫黄細菌,繊維状非酸素発生型光合成細菌(緑色糸状性細菌)の4群に分けられていた.現在,原核生物の系統関係は,リボソームの小サブユニットを構成するRNA (16S rRNA)やその遺伝子(16S rDNA)を分子指標とした分子系統学的解析を基礎として,生化学的・形態学的な解析を加味して総合的に決定されるのが一般的である. 16S rRNA の分子系統学的解析からは,光合成能をもつ原核生物は主に紅色細菌,緑色硫黄細菌,繊維状非酸素発生型光合成細菌(緑色糸状性細菌),バクテリオクロロフィルgをもちグラム陽性菌に属するヘリオバクテリア,さらに酸素発生型光合成を行うシアノバクテリアを含めた5群に分かれ,それぞれ細菌ドメインの異なる5つの「門」に属する.近年,これら5群に加え,アシドバクテリウム門に属するクロラシドバクテリウム、およびジェマティモナス門の単離株に光合成能が見いだされたため,光合成能をもつ原核生物種を含む系統は全部で7門ということになっている.なお,紅色細菌には従来の紅色非硫黄細菌や紅色硫黄細菌が属するほか,腸内細菌や土壌細菌などの光合成能をもたない多くの細菌種が含まれるので,この群をプロテオバクテリアと呼ぶことが提唱され一般的になっている.また,好塩菌ハロバクテリアなどはバクテリオロドプシンを用いて光に依存するエネルギー代謝を行うが,これらの仲間はアーキア(古細菌)ドメインに属する.