#freeze
*フェルスター型励起移動[Forster-type excitationtransfer] [#cbfaeee7]
  スピン一重項電子励起状態(→一重項状態)が2分子間を移動する現象.これを起こす相互作用の量子力学行列要素Jは「[[励起エネルギー移動]]」の項目の式(1)でδM=1とおいて得られる.その第2項は[[デクスター型励起移動]]のときと同じで両分子が十分離れている通常の場合には小さく,第1項のみで近似でき,式(2)の2倍となる.この式は,スピン一重項励起の移動に際し,供与体分子AではLUMO[lowest unoccupied molecular orbital, φA(r)]に上がっている電子がHOMO[highest occupiedmolecular orbital, ΨA(r)]空孔に降りると同時に,受容体分子Bでは(座標r'の)HOMO電子の一方がLUMOに上がる過程を表す.両分子の位置ベクトルをそれぞれRAとRBとし,この式中のr-r'=(r-RA)-(r'-RB)+RA-RBにおける右辺第1・2項はR≡RA-RBに比べて十分小さいのでこれらに関し展開できる.展開初項はAとBの有効[[遷移双極子]],それぞれμA[=√2q∫φA(r)(r-RA)ΨA(r)dr]とμB間の静電相互作用の形をもつ.すなわち

#ref(Forster1.png)
となり,分子間距離|R|の3乗に反比例する.ここで√2の因子は1分子につきHOMO電子2個が光学遷移に寄与することに起因し,εは周辺媒質の静誘電率である.波動関数の対象性によりAとBの一方または両方が[[禁制遷移]]のときには当該のμが0なので,さらに高次の展開が必要で,Jは遷移四重極子・双極子や四重極子・四重極子相互作用の形になり,|R|のそれぞれ4乗と5乗に反比例して減衰する.&br; デクスター型励起移動の場合と違い,Jは両分子間での波動関数の重なりを必要としないので,「励起エネルギー移動」の項目でJが十分小さくそれが遷移により起こる場合のみならず,Jが十分大きく[[励起子]]により起こる場合も生ずる.前者のとき,分子AからBへの遷移確率kBAは同項目式(4)である.ρB(E)はBの光吸収スペクトルXB(E)に,またアインシュタインの関係より

#ref(Forster2.png)
はAの[[蛍光スペクトル]]LA(E)になり,ともに積分が1に規格化されている.したがって,フェルスター公式

#ref(Forster3.png)
となる.(→遷移双極子,フランク-コンドン因子,許容遷移)


** 関連項目 [#if72ced0]
-[[一重項状態]]
-[[遷移双極子]]
-[[フランク-コンドン因子]]
-[[許容遷移]]

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