#freeze
*酸素発生系[oxygen evolving system, oxygen evolving complex, oxygen evolving center (OEC)] [#nfb19f59]
  水分解系,水の酸化系ともいう.[[酸素発生型光合成]]を行う植物([[真核光合成生物]])や[[シアノバクテリア]]は,CO&subsc(2);を還元するための電子供与体として水を用いている. 2H&subsc(2);O→O&subsc(2);+4H&supsc(+);+4e&supsc(-);の式で表されるように,この水の酸化過程では,プロトンの遊離とともに酸素分子が発生する.プロトンは[[ATP合成]]に利用されるが,酸素分子は不要物として大気中に放出される.[[酸素発生]]は,[[光化学系Ⅱ複合体]]のルーメン側に結合する4つのMn原子と1つのCa原子よりなる[[マンガンクラスター]]によって触媒される.Mn原子とCa原子は[[D1タンパク質]]の6つのアミノ酸(Asp170, Glu189, His332, Glu333, Asp342, Ala344(C末端))と[[CP43]]タンパク質の1つのアミノ酸(Glu354)によって配位され,5つの酸素原子によって架橋されたMn&subsc(4);CaO&subsc(5);構造を形成する.マンガンクラスターの近傍には2つのCl&supsc(-);イオンが結合しており,酸素発生反応に関与していると考えられている.酸素発生系は,狭義にはマンガンクラスターそのものをさすこともあるが, 通常はマンガンクラスターとその配位子および近傍構造を含める.水分解反応(=酸素発生反応)は, [[S状態>S状態モデル]]と呼ばれる5つの中間状態(S&subsc(n);:n=0~4)の光駆動サイクルとして進行する.光化学系Ⅱにおける光誘起電荷分離反応により,強い酸化力をもつクロロフィル二量体[[P680]]のラジカルカチオンが生成し,[[チロシンZ]](Y&subsc(Z);=D1-161Tyr)を介してマンガンクラスターが酸化され,S&subsc(n);からS&subsc(n+1);(n=0-3)への遷移が起こる.S&subsc(4);は不安定な中間状態であり,酸素分子を放出してS&subsc(0);状態となる.4つの光量子による4回の電子移動反応によってS状態サイクルが1周し,2分子の水から1分子の酸素が形成される.そのため,閃光照射によって水分解反応を解析すると,酸素発生や様々な分光測定の信号は4周期振動を示す.


** 関連項目 [#if72ced0]
-[[マンガンクラスター]]
-[[S状態モデル]]
-[[酸素発生の4周期振動]]

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