酸素発生系[oxygen evolving system, oxygen evolving complex, oxygen evolving center (OEC)]

  水分解系,水の酸化系ともいう.酸素発生型光合成を行う植物(真核光合成生物)やシアノバクテリアは,CO2を還元するための電子供与体として水を用いている. 2H2O→O2+4H++4e-の式で表されるように,この水の酸化過程では,プロトンの遊離とともに酸素分子が発生する.プロトンはATP合成に利用されるが,酸素分子は不要物として大気中に放出される.酸素発生は,光化学系Ⅱ複合体のルーメン側に結合する4つのMn原子と1つのCa原子よりなるマンガンクラスターによって触媒される.Mn原子とCa原子はD1タンパク質の6つのアミノ酸(Asp170, Glu189, His332, Glu333, Asp342, Ala344(C末端))とCP43タンパク質の1つのアミノ酸(Glu354)によって配位され,5つの酸素原子によって架橋されたMn4CaO5構造を形成する.マンガンクラスターの近傍には2つのCl-イオンが結合しており,酸素発生反応に関与していると考えられている.酸素発生系は,狭義にはマンガンクラスターそのものをさすこともあるが, 通常はマンガンクラスターとその配位子および近傍構造を含める.水分解反応(=酸素発生反応)は, S状態と呼ばれる5つの中間状態(Sn:n=0~4)の光駆動サイクルとして進行する.光化学系Ⅱにおける光誘起電荷分離反応により,強い酸化力をもつクロロフィル二量体P680のラジカルカチオンが生成し,チロシンZ(YZ=D1-161Tyr)を介してマンガンクラスターが酸化され,SnからSn+1(n=0-3)への遷移が起こる.S4は不安定な中間状態であり,酸素分子を放出してS0状態となる.4つの光量子による4回の電子移動反応によってS状態サイクルが1周し,2分子の水から1分子の酸素が形成される.そのため,閃光照射によって水分解反応を解析すると,酸素発生や様々な分光測定の信号は4周期振動を示す.

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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:44:32