適応[adaptation]

  生物が環境における自らの状況を改善するために,構造,習性,特性などを遺伝的に変更し,調整することを適応と呼ぶ.適応は,生物学的には進化の選択圧による種の自然選択の結果であり,生物が自らに積極的に働きかけて遺伝的変化を起こしたわけではない.これに対し,馴化は,温度,光,標高などの気候や環境の変化に対して生物が生理的に順応することをさす.適応によって起こった変化は,進化的時間を経た結果であり,子孫に受け継がれる形質であるのに対し,馴化によって起こった生理的変化は環境変化に対して速やかで,可逆的である.ある種の植物は,光,低温(→低温馴化),高温,乾燥,塩に関して準限界ストレスを短期間経験することにより馴化し,その後より厳しいストレスにも耐性となる.このとき,ストレスを取り去ると細胞は元の生理状態に戻る.
 適応と馴化の用語の使い分けは必ずしも厳密ではなく,折衷的な語として“順応”が用いられることがある.たとえば,明るい部屋から暗い部屋に入ると最初は周りのものがよく見えないが,次第に周りのものが見えてくる.この現象は,暗順応(darkadaptation)と呼ばれる.逆に,暗い部屋から明るい部屋に移るときも視覚が明順応(light adaptation)するまでには時間がかかる.暗順応した眼と明順応した眼では瞳孔の開き方や視細胞の光感受性など構造的・機能的変化が見られるので,相互に可逆的な変化であるにもかかわらず英語では“adaptation”(訳語としては“順応”)という用語が使われている.一方,たとえば生葉の光合成を測定する際に前もってサンプル葉を暗処理する操作は暗馴化(dark accli-mation)と呼ばれ,暗所で生育させた植物を徐々に光強度を上げてゆき強光でも枯れなくなるようにする操作は明馴化(light acclimation)と呼ばれる.これに対し,林床に生育する耐陰性の高い植物(陰性植物)は,その光環境に適応しているという.

関連項目


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