D1タンパク質[D1 protein]

  酸素発生型光合成光化学系Ⅱ反応中心を構成するサブユニットの一つ(psbA遺伝子産物). D1タンパク質は, Ellis(1977)により,35S-メチオニンを用いるパルスラベル実験で,光照射下で最も強くラベルされるチラコイド膜タンパク質成分として発見され,また,Pflitzerら(1981)によるアジド(14C)アトラジンを用いた光アフィニティーラベルの実験で,光化学系ⅡにおけるQBキノン電子受容体および除草剤結合タンパク質として同定され,psbA遺伝子産物(真核生物では葉緑体遺伝子)として記述された.一方,光化学系Ⅱの活性をもつ標品の生化学的純化の過程で,光化学系Ⅱコア複合体のサブユニットの1つ,さらには光化学系Ⅱ反応中心の機能を担う[[D1/D2/シトクロムb559複合体>D1/D2/シトクロムb559複合体]]の主サブユニットとして同定され,これら3者が同一のタンパク質であることが明らかになった.
 D1タンパク質は,相同なタンパク質であるD2タンパク質と対になり,光化学系Ⅱ反応中心の中核を担うヘテロ二量体を構成して,一次電子供与体として機能するクロロフィルa (P680)を結合するとともに,その161番目のチロシン残基(チロシンZ)はP680とマンガンクラスターの間で電子伝達体として機能している.また,このタンパク質は,光化学系ⅡのQBキノン電子受容体の結合部位,非ヘム鉄および水分解の触媒中心であるマンガンクラスターの主要な結合部位を提供していると号えられている.D1タンパク質は,このような機能上の重要さにもかかわらず,Ellisの実験で示されたように葉緑体チラコイド膜上で極端に速く代謝回転している成分である.この代謝回転は,光化学系Ⅱ反応中心の他のタンパク質を過剰な光による傷害から保護するための機構としての“D1タンパク質損傷修復サイクル"の存在を示すものとして説明されている.D1タンパク質は,そのC末端に8~16残基のアミノ酸より成る延長部分をもつ前駆体として合成され,光化学系Ⅱ複合体に取り込まれた後,真核生物の場合には,核支配のプロテアーゼ(CtpAまたはD1P)の作用により,この部分が切断除去されて成熟化する.この切断の結果現れる成熟体C末端のアラニンはマンガンクラスターの配位子となっていると考えられており,このプロテアーゼによるD1タンパク質のプロセシングは,光化学系Ⅱにおける水分解の機能発現に不可欠である.(→D1タンパク質合成,光化学系Ⅱ反応中心,D2タンパク質,除草剤結合タンパク質,Lサブユニット,口絵・付録)

関連項目


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