#freeze
*光化学系Ⅰ一次電子供与体[PSI primary electron donor] [#c4aa686b]
  アンテナクロロフィルに吸収された光エネルギーは最終的に[[反応中心クロロフィル]]に伝達され,[[初期電荷分離反応]]を引き起こす.この際に、反応中心クロロフィルから[[一次電子受容体]]に電子受け渡されることから,反応中心クロロフィルを[[一次電子供与体]]とも呼ぶ.光化学系Ⅰ一次電子供与体は[[P700]]と呼ばれ,他のアンテナクロロフィルよりエネルギーレベルが低いため(→長波長アンテナ,光化学系Ⅰの長波長蛍光),光エネルギーはよい効率でP700に伝達される.励起されたP700(P700*と表される)は,次いで電子を,やはり特殊な存在状態のクロロフィル分子である[[光化学系Ⅰ一次電子受容体]]に渡して,自身は酸化型となる.この過程は,数ピコ秒(ピコ= 10&supsc(-12);)以内に起こる非常に速い反応であり,光エネルギーを化学エネルギーに変換する最初の化学反応である. P700の酸化還元電位は400 mV 付近にあるが, P700*の酸化還元電位は-1,300 mV にもなり,非常に強い還元剤となる.これが光化学系Ⅰで強い還元力を生み出す原因となる.&br; P700の実体はクロロフィル'''a'''と[[クロロフィル'''a'''エピマー>クロロフィルaエピマー]]から成る二量体である.そのため,2つのクロロフィル分子の吸収帯が縮退して700 nm 付近にかなり幅の広い吸収帯をもつようになる.二量体をつくっている各々のクロリン環はほぼ平行に3.6Åの距離を隔てて並んでいるが,各々のクロリン環は互いにずれており,それぞれのピロール環のうちA環とB環のみが部分的に重なっている.また,  これらのクロリン環は膜表面に対してはほぼ直交しており,チラコイド膜のルーメン側に位置している.クロロフィル'''a'''エピマーのMg原子はPsaAポリペプチド鎖のヒスチジン('''Thermosynechococcus elongatus'''ではHisA680)と配位結合をしており,そのフィトール基はPsaBポリペプチドの方向に延びている.一方,クロロフィル'''a'''のMg原子はPsaBポリペプチド鎖のヒスチジン('''T. elongatus'''ではHisB660)と配位結合をしており,そのフィトール基はPsaAポリペプチドの方向に延びている.クロロフィル'''a'''エピマーのみがPsaAのアミノ酸残基と水素結合しており,そのため, P700が1電子を放出した後,+電荷はかなりの割合でクロロフィル'''a'''分子側に局在することになると推定される.したがって, P700の酸化型はChl a'-Chl a&supsc(+);の形となり,2つのクロロフィル分子の吸収帯の縮退が解けて685 nm 付近にクロロフィル'''a'''(エピマー)の単量体型の吸収帯が出現する.

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