#freeze
*発酵[fermentation] [#if064fe6]
 嫌気条件下において,植物は主に[[ピルビン酸]]を初期基質として用いる3つの経路(アルコール発酵系,乳酸発酵系,アラニン合成系)を働かせる.~
 アルコール発酵では,ピルビン酸デカルボキシラーゼ(PDC)による触媒で[[ピルビン酸]]をアセトアルデヒドへ変換,その後,アルコール脱水素酵素(ADH)による触媒でアセトアルデヒドがエタノールに変換され,同時にNADHからのNAD&supsc(+);の再生が起こる.[[酸化的リン酸化]]の不活化で生じるNADH/NAD&supsc(+);サイクルを維持できるため,アルコール発酵の最も重要な役割としてこのNAD&supsc(+);の再生があげられる.シロイヌナズナではPDC活性を4つの遺伝子がコードしており,PDC1はメインとなる遺伝子であり根で発現することが分かっている.一方,PDC2は葉と根の両方で発現することが分かっている.ADHにおいては,ADH1遺伝子が知られており,[[シロイヌナズナ]]ではADHの誘導はROP GTPaseの活性によりコントロールされている.~
 乳酸発酵では,乳酸脱水素酵素がNADHを用いて[[ピルビン酸]]を乳酸に還元しNAD&supsc(+);を再生する.~
 アラニン合成系での[[アラニン]]とオキソグルタル酸を介した[[ピルビン酸]]からのコハク酸への迂回経路は,上記の発酵系に加えもう一つの重要な系といえる.AlaAT(ALT)は,[[ピルビン酸]]とグルタミン酸を[[アラニン]]と2-オキソグルタル酸に触媒する酵素で,嫌気状態になると強くアップレギュレートされる.2-オキソグルタル酸は,[[TCA回路]]の酵素であるオキソグルタル酸デヒロドゲナーゼにより触媒され,NAD&supsc(+);を用いてコハク酸とATPに変換される.この時必要となるNAD&supsc(+);は,[[TCA回路]]の酵素である[[NAD-リンゴ酸デヒドロゲナーゼ]]が[[オキサロ酢酸]]から[[リンゴ酸]]への変換を触媒する際にNADHが酸化されることで供給される.この反応は通常の[[TCA回路]]の反応系とは逆の系を通る(好気条件下では逆方向の[[リンゴ酸]]から[[オキサロ酢酸]]への変換が起きる).生じた[[リンゴ酸]]は[[NAD-リンゴ酸酵素]]を介して[[ピルビン酸]]になるか,フマラーゼと[[NAD-リンゴ酸デヒドロゲナーゼ]]を介してコハク酸へと代謝される.嫌気条件下で酸化的リン酸化が減損した際に,通常の[[TCA回路]]とこの非循環的な経路とを並列進行することで,[[TCA回路]]でのATP生産が最小限に最適化される中,通常の2倍のATPを生産できる.

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