#freeze
*黄化[etiolation]
  植物を暗所で生育させると緑色ではなく黄色い葉を生じ,形態的にはいわゆるもやし(黄化芽生え)になったり,葉や茎が間延びしたりする.この現象のことを黄化と呼び,黄化した組織のことを黄化組織という.黄色は葉に蓄積した[[カロテノイド]]の色であり,明所で生育させた植物にも存在するが,黄化した植物には[[クロロフィル]]がないためにカロテノイドが目立つようになる.黄化した植物に光照射すると数時間から1日程度で緑色に変化するが,この現象は[[緑化]]またはグリーニングと呼ばれる.黄化するのは被子植物に限られ裸子植物は黄化しないが,その理由はクロロフィル生合成系の[[プロトクロロフィリド]]レダクターゼ(POR)の特性の違いによる.黄化している葉に含まれるプラスチドは[[エチオプラスト]]と呼ばれ,葉緑体のような[[チラコイド膜]]の重なりは見られず,エチオプラスト内部に多くの割合を占めて存在する結晶様の[[プロラメラボディ]]が固有の特徴である.プロラメラボディを構成するのは酵素であるPOR,基質の[[プロトクロロフィリド]],補酵素のNADPHから成る三量体と[[モノガラクトシルジアシルグリセロール]](MGDG)などのプラスチド特有の膜脂質である.黄化葉に光照射すると,吸収した光によりプロトクロロフィリドが励起され,この励起エネルギーを用いてプロトクロロフィリドが還元(光還元)されクロロフィリドに変わり,さらに下流の合成酵素群の働きによりクロロフィルが生合成される.このときプロラメラボディは崩壊しチラコイド膜構造が発達してくる.PORによるクロロフィリド合成にはこのような光依存性があるために, POR型の酵素しかもだない被子植物は暗所下ではクロロフィル合成が行えない.一方,シアノバクテリアや緑藻,裸子植物はこの反応にPORとは別種の酵素である*CHLL/CHLN/CHLB(複合体)を(も)用いるが,この酵素は触媒活性に光依存性がなく,暗所下でもクロロフィリド合成を行えるため,これらの生物は暗所下で緑化することができる.

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