#freeze
*PAM蛍光法[pulse amplitude modulated fluorometry] [#iff24118]
  光化学系Ⅱのクロロフィルa蛍光測定法の一種.生理学的光条件下における光化学系Ⅱ反応の量子収率と,その変化を見積もることが可能である.ドイツのSchreiberらにより普及タイプの測定装置が開発され,一般に繁用されるようになった.弱い赤色LED(発光ダイオード)パルス光を測定光として用いる.光化学系Ⅱからのクロロフィル蛍光をダイナミックレンジの広いピンダイオードで検出し,モニター光と同じ周期で変動する部分を差動増幅して信号を得る.光化学反応を駆動する励起光として用いる連続光由来の蛍光や反射光は周期変動成分をもたないので増幅されないため,測定光由来の蛍光を励起光の妨害なしに測定できる.この結果,白色光照射下での量子収率の変化などの測定が容易に行える.特に,[[クロロフィル蛍光の光化学的消光]](qP:photochemical quenching)や[[クロロフィル蛍光の非光化学的消光]](qNまたはNPQ : nonphotochemical quenching)の見積もりには欠かすことのできない手法となっている.ストレス条件下の光化学系の阻害の見積もりにも頻用される.また,測定光のパルス周波数を上げる(100 KHz)と10μ秒程度の時間分解測定を行うことが可能で,閃光照射後の光化学系Ⅱの一次キノン電子受容体Q&subsc(A);から二次キノン電子受容体Q&subsc(B);への電子移動速度が測定できる.測定光としてキセノン閃光を用いたり,光電子倍増管により蛍光を検出するタイプもある.&(br);
 図は葉における飽和パルス光を利用した測定例を模式化したものである.Foは十分に弱いパルス測定光のみを照射したときの蛍光レベルで, Q&subsc(A);が全て酸化型にあるときの蛍光に対応する.暗順応した葉では[[還元的ペントースリン酸回路]](カルビン回路)の活性が抑制されているため,励起光照射によりQ&subsc(A);は急速に還元され蛍光はFmレベルを示す.励起光照射の前に飽和パルス光を照射しFmを求める場合もある.励起光照射に伴いカルビン回路が活性化し,光化学系Ⅰからの還元力を消費するようになると,蛍光レベル(F)の低下がみられるようになる.数分おきにQ&subsc(A);の完全還元に十分の強さの数百ミリ秒の光飽和パルス光を与え, Q&subsc(A);が完全に還元したときの蛍光レベル(Fm')を求める.Fm'とFの差は励起光照射下で還元していないQ&subsc(A);の割合(光化学的消光:qP)に対応する.一方,FmとFm'の差はQ&subsc(A);の酸化還元状態によらない蛍光の減少(非光化学的消光:qNまたはNPQ)に対応する. NPQ (qN)にはΔpH形成による[[チラコイドルーメン]]の酸性化に起因する,集光性クロロフィル'''a'''/'''b'''タンパク質の構造変化による励起エネルギーの熱緩和過程の増加(qE)(光化学系ⅡのΔpHによる効率低下制御,[[キサントフィルサイクル]])や[[ステート1-ステート2遷移]](qT)など,光化学系Ⅱ反応中心が過剰に励起されないように光捕集色素に吸収された光エネルギーを光化学系Ⅱに伝えにくくする機構によるものと,光阻害(qI)によるものがある.それぞれ,照射時間とともに増加し一定の値に達する. NPQの大きさは励起光の強さにより異なり,励起光が弱いほど小さい.励起光を切ると還元されたQ&subsc(A);はすばやく酸化されるがqN (qEとqT)の解消にはある程度の時間が必要なため,蛍光はFoより低い強度レベル(Fo')となった後,qNが解消するにつれFoまで戻る.qIの回復は通常短時間では起こらない.Q&subsc(A);の完全酸化状態に対応する蛍光レベルFoが励起光照射中はqNによりFo'まで低下しているので, PAM測定法においては,qP=(Fm'-F)/(Fm'-Fo'), qN=1-(Fm'-Fo')/(Fm-Fo)と定義する.一方, NPQは (Fm-Fm')/Fm'と定義される.qNとqPは0から1の間の値をとるが,NPQは,理論上消光に関わる分子の濃度に比例し,1よりも大きな値をとる場合もある.qP, qN, NPQは対応する現象全般を指し示す略号としても用いられる.&(br);
 光化学系Ⅱに吸収された光エネルギー(E)は蛍光としての放出(F),光化学反応での利用(P=光化学系Ⅱの量子収率),熱緩和(D),のいずれかで消費される(E=F+P+D=1).飽和光パルス照射でQ&subsc(A);が完全に還元されているときは,P=0, F=Fm', D=DmなのでDm=1-Fm'.飽和光パルス下でも熱緩和と蛍光過程の比率が変化しないとすると, D/F=Dm/Fm'.したがって, D=F (1-Fm')/Fm', P=1-F-D=(Fm'-F)/Fm'となり励起光照射中の光化学系Ⅱの量子収率Pを(Fm'-F)/Fm'として推定することができる.この値はφⅡと呼ばれ,光強度([[光量子束密度]])を掛けると相対的な電子伝達速度の大きさ(ETR)を与える.市販機種では,内蔵されたプログラムにより各種光合成パラメータが自動的に算出されるようになっているものも多い.しかし,得られたパラメータが測定条件下で,何を反映しているのかについては十分な検討が必要である.


#ref(PAM.png)


** 関連項目 [#if72ced0]
-[[蛍光]]
-[[蛍光の誘導期現象]]
-[[光合成有効放射]]

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