光により損傷を受けたD1タンパク質はプロテアーゼによる分解により光化学系IIから除去される。葉緑体でのD1タンパク質分解には二種類の原核型プロテアーゼが関与しており、光強度に応じて協調的に機能していると考えられている。そのひとつはストロマチラコイドに存在するFtsHプロテアーゼである。FtsHプロテアーゼはATP依存性メタロプロテアーゼであり、損傷を受けたD1タンパク質のアミノ酸末端を認識し、ATP依存的にその構造をほどきながら連続的(プロセッシブ)な分解を担うと考えられている。一方、ストロマ側ならびにルーメン側に存在するATP非依存性のセリンプロテアーゼDegもD1タンパク質分解に関与する。エキソ型のFtsHに対し、DegはD1タンパク質のストロマならびにルーメン側に露出したループ状構造を切断するエンド型プロテアーゼである。シロイヌナズナでは、ストロマ側にDeg2, Deg7が、ルーメン側にDeg1,Deg5, Deg8が存在している。FtsH欠損変異体では、Degにより切断されたD1分解断片が蓄積しており、Degにより切断されたD1断片もFtsHの基質であることが示されている。こららの結果から、FtsHがD1タンパク質分解を担う主要なプロテアーゼであり、DegはD1の断片化によりFtsHが認識することのできるアミノ酸末端を増やし、D1分解の効率化を行っていることが考えられている。 この他、反応性の高い活性酸素種あるいはラジカルによるD1タンパク質の切断、損傷を受けたD1タンパク質と他の光化学系Ⅱ反応中心タンパク質(D2タンパク質あるいはシトクロムb559のαサブユニット)との架橋がD1タンパク質の分解に関与するとの報告もあるが、最終的にはこれらもFtsHによりペプチド鎖へと分解されると考えられている。