褐藻や珪藻などの主たる光捕集タンパク質で,フコキサンチン,クロロフィルa,クロロフィルcがタンパク質と結合した複合体である.褐藻の場合,タンパク質は分子量2.0万近傍で,タンパク質1分子にクロロフィル c 1分子,クロロフィルa 4分子,フコキサンチン4~6分子が結合している.この複合体のフコキサンチンの吸収極大は有機溶媒中ではより長波長側にシフトしていて500~550 nm の光を吸収する.このためこの複合体は橙赤色であるが,この長波長型は不安定で容易に短波長型に戻り,複合体は緑色になる.褐色のワカメが乾燥や熱処理で緑色になるのはこの変化に対応する.フコキサンチンやクロロフィル cに吸収された光エネルギーは高い効率でクロロフィルaに直接転移される.水中では深くなるに従って青緑色の光(500~550 nm)のみが残るので,海洋の光合成でフコキサンチンの長波長シフトの意義は大きい.このタンパク質を支配する遺伝子は核にあり,複数コピーの存在が知られている.遺伝子解析から緑色植物の光捕集クロロフィルタンパク質 (LHCP)と類縁のものとみられている.