プロテインキナーゼ[protein kinase]

  タンパク質リン酸化酵素(以下キナーゼと略記).タンパク質をリン酸化修飾し,その成熟や活性の制御に関与する.キナーゼは,その構造と機能から大きく2つに分類される.主に動物や酵母で見つかったSer/Thr/Tyrキナーゼと,微生物の環境応答で主要な役割を果たしているHisキナーゼである.植物はその両方を備えている点が興味深い.
 シロイヌナズナのゲノムデータからは, Ser/Thr/Tvrタイプのキナーゼドメインをもつものだけでも916の遺伝子がリストされている.その名の通り,Ser/Thrキナーゼはタンパク質中のSerまたはThrのOH基を基質とし, TyrキナーゼはTyr残基を基質とする.これらのキナーゼの配列には類似性がみられ,一つのスーパーファミリーを形成している.植物から見つかったSer/Thrキナーゼは動物・酵母のそれと比較的よく類似しているが, Tyrキナーゼの構造はあまり保存されていない.また, MAP (はじめはmitogen-activated protein を基質として見いだされた)キナーゼカスケードの場合のように動物や酵母と類似のキナーゼが見つかった場合でも,その役割は動物や酵母と同じとは限らないようである.
 Hisキナーゼは, Ser/Thr/Tyrキナーゼとはまったく異なった構造をしており,その働き方も自身のHis残基への自己リン酸化を含む独特の様式を備えている.微生物型のHisキナーゼの遺伝子は,葉緑体の祖先の共生とともに植物細胞にもたらされたという説もあるが,現在では植物ホルモンの受容と情報伝達の経路などに関与していることが示されている.
 これらのキナーゼとプロテインホスファターゼが複合してカスケード系を形成したものが,リン酸化カスケードである.


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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:42:50