ミトコンドリア[mitochondrion (pl.mitochondria)]

 真核細胞にある二重膜構造で,酸化的リン酸化が行われるエネルギー生成小器官.通常0.5 μm × 1~2 μmの大きさである.植物細胞には100~200個が含まれるが,その数は器官や組織,細胞の状態によって大きく変動する.たとえば転流が盛んに行われている伴細胞ではミトコンドリアが細胞質の20%近くを占める.藻類や菌類では,網目状や紐状をした1個から数個の巨大ミトコンドリアになる場合もある.ミトコンドリアは内外2枚のミトコンドリア膜に包まれている.内膜は内部に向かって突出し,幅20~30 μmのクリステを形成する.内膜に囲まれた部分はミトコンドリアマトリックス,内外の膜に挟まれた部分は膜間領域と呼ばれる.
 ミトコンドリアにはTCA回路と電子伝達系および両者に共役する酸化的リン酸化の酵素があり,好気条件下におけるATPエネルギー生成が行われている.外膜にはポリンと呼ばれる輸送タンパク質が存在し,親水性チャネルを形成している.分子量1万以下の分子は自由に外膜を通過し膜間領域に入れる.内膜にはプロトン-ATPaseや電子伝達系のタンパク質が多数存在し,重量比で70%がタンパク質である.また内膜は非透過性で選択的な輸送を行う輸送体が存在する.内膜に囲まれたマトリックスにはピルビン酸や脂質などを酸化する酵素やTCA回路の酵素のほかに,様々な生体システムに関わる酵素(例えば光呼吸経路の酵素や活性酸素種消去系酵素など),さらにミトコンドリアDNA,リボソームが存在する.ミトコンドリアは細胞内で分裂によって増殖する.ミトコンドリアの分子遺伝機構は原核生物に似ており,ミトコンドリアの起源は好気性細菌の細胞内共生によるという細胞内共生説の証拠となっている.ただし,植物のミトコンドリアDNAは細菌類のゲノムに比べ極端に小さく,ミトコンドリアの多くの機能は核遺伝子産物に依存している.


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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:43:50