亜硝酸レダクターゼ[nitrite reductase]

  亜硝酸イオンの還元に関与する酵素.亜硝酸イオンの生物的還元は,同化型還元と異化型還元に分類される.前者の反応生成物はすべてNH4+であり,含窒素化合物に同化される.また,異化的還元には,三電子還元されてNO→N2O→N2に至る脱窒過程,および六電子還元されてNH4+として細胞外に排出される過程の2つある.脱窒過程は主として原核生物やカビに特有の反応である.植物もNOやN2Oを放出することが知られている.
 同化型亜硝酸レダクターゼには,フェレドキシン(Fd)が電子供与体となるFd-硝酸レダクターゼ(Fd-NiR, EC 1.7.7.1)とNAD(P)H-NiR (EC 1.6.6.4)がある. Fd-NiRは高等植物,藻類,シアノバクテリアなど光合成生物に存在する酵素であり,分子量6万~6.4万の単量体として単離される.補欠分子として1分子のシロヘムと[Fe-4S]鉄硫黄クラスターが結合している.NAD(P)H-NiRはアカパンカビの同化型酵素で,分子量29万のホモ二量体として単離される.各ポリペプチドにFADとシロヘムが各1分子および[Fe-4S]クラスターが結合している.Fd-NiR酵素タンパク質は葉緑体に局在する.タバコ,イネ,トウモロコシ,トウガラシ,トマト,ダイズは複数のFd-NiR遺伝子をもつ.葉型と根型に分けられる場合もあるが,生理作用は未解明である.亜硝酸イオンは細胞毒性があるといわれ,タバコやシロイヌナズナの葉では,亜硝酸イオンは硝酸イオンの4桁または3桁低い.タバコのこの酵素活性をアンチセンス法で90%以上阻害すると,タバコの成長は著しく阻害されるが,植物体の硝酸還元量はほとんど影響を受けないなど,未解明な部分は依然多い.

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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:42:55