光合成の振動[photosynthesis oscillation]

  光合成速度が時間の経過に対して増減することをいう.この振動が観測される状況として,暗黒下に置かれた生葉あるいは葉緑体が*高CO2条件下光照射される,あるいは大気CO2/O2条件で光合成が定常状態にあるとき,高CO2条件に突然移されるなどの場合が知られている.いずれの場合も,新たな条件に移されたとき,光合成の振動の振幅は大きく,時間とともに減少し,光合成速度は定常値に達する.光合成の振動と同期して,光散乱にも振動が観測されるが,振動に対して位相が180度ずれたクロロフィル蛍光強度の振動が観測される.つまり,クロロフィル蛍光強度の変化はチラコイド膜を介するプロトン勾配の形成/解消に由来する.高CO2条件に移されると,CO2固定反応が促進されATPが消費されるが,これに伴う電子伝達反応で生成するATPの生成量は消費量を上回り,ATPaseによるATP合成が抑制されることで,プロトン勾配が形成され,クロロフィル蛍光強度は低下する.その後,生成したATPの消費,そして生成の繰り返しを重ねながら(振動しながら),光合成速度は定常値へと向かう.


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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:43:44