光増感[photosensitization]

  ある化学物質が光を吸収することにより,その物質が共存しない系では起こらない,もしくは起こりにくい化学反応が,効率よく進行する場合がある.この物質が反応前後で変化していないとき,この化学物質を光増感剤,反応自体を光増感反応と呼ぶ.不均一系における反応の場合,それぞれ光触媒および光触媒反応と呼ばれることもある.光増感反応は,最初に光増感剤が光を吸収し励起状態になることによって開始され,その後,励起された光増感剤と基質との間で,エネルギー移動もしくは電子移動が起こることによって進行する.電子移動を経由する反応の場合,酸化もしくは還元された光増感剤は,他の基質と電子の授受を行うことによって,元の光増感剤へと再生される.
 光増感剤は,人工光合成における必須の構成要素である.なかでも, 2,2'-ビピリジンが3つ配位したルテニウム錯体や亜鉛テトラフェニルポルフィリンは,電子移動を誘起する代表的な光増感剤であり,多電子還元を触媒する物質とともに用いることにより,水素発生や二酸化炭素の固定などの光反応を効率よく起こすことができる.一方,アセトフェノンなどのカルボニル化合物は,オレフィンのシス-トランス異性化反応を光増感することがよく知られている.この異性化は,カルボニル化合物の三重項励起状態から,オレフィンへのエネルギー移動を経由して進行する.

関連項目


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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:45:01