抗酸化剤[antioxidant]

  細胞成分の酸化を防止する低分子化合物の総称.酸化剤として働く活性酸素種(スーパーオキシドアニオンラジカル(O2-)やヒドロキシルラジカル(・OH)など)を消去する物質や脂質の酸化を抑制する物質を抗酸化剤と呼ぶ.抗酸化剤(AH)はO2-をH2O2に,・OHを水に還元し,A・を生成する.また,AHは脂質ラジカル(L・,LO・, LOO・)を還元してラジカル連鎖反応を抑制すると同時にA・を生成する.上の反応で生成したA・は二量体形成や不均化反応などによってそのラジカルを消滅させる場合と,他の物質によってAHに還元される場合がある.植物細胞に含まれる抗酸化剤の主なものはアスコルビン酸トコフェロールポリフェノールカロテノイドである.アスコルビン酸はO2-をH2O2に還元する.脂溶性であるトコフェロールは生体膜で脂質の酸化を抑制し,その結果生成したトコフェロールラジカルはアスコルビン酸によってトコフェロールに還元される.ポリフェノール(ケルセチンなど)がO2-や脂質ラジカルを還元すると,フェノキシラジカル(ケルセチンラジカルなど)が生成する.フェノキシラジカルはアスコルビン酸によってポリフェノール(ケルセチンなど)に還元され,再び抗酸化能を発揮できるようになる.また,ペルオキシダーゼ/H2O2系で生成したフェノキシラジカルもアスコルビン酸で還元されるので,ペルオキシダーゼ/ポリフェノール/アスコルビン酸系はH2O2を消去できる.以上の反応によって生成したアスコルビン酸の酸化産物は細胞内でアスコルビン酸に還元される.カロテノイドは一重項酸素分子を消去することによって抗酸化剤として働くことができる.上記の抗酸化剤はヒト体内でも抗酸化能を発揮できるため,食品として重要である.

関連項目


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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:46:02