硝酸呼吸[nitrate respiration]

  嫌気呼吸の一形式で,異化的硝酸還元と同意.細菌が一般に酸素のない嫌気条件で硝酸イオン(NO3-)を最終電子受容体とし,電子伝達系を介してNO3-を二電子還元して亜硝酸イオン(NO2-)を生成する反応をいう.この電子伝達によりATPが生成される.硝酸呼吸には固有の電子伝達系と硝酸レダクターゼが関与する.硝酸還元の酸化還元電位は比較的高く,ATP生成効率は比較的高い.硝酸還元により生産される一酸化窒素(NO)は有害物質であるが,低酸素誘導型(hypoxia-induced (class1))ヘモグロビンが誘導されることで分解され植物体内に蓄積しない.Class1ヘモグロビンは,NOをNO3-に戻す際のNOオキシゲナーゼとして働く.硝酸呼吸による解毒とエネルギー状態を維持するのに,1モルのNO3-のリサイクルに2.5モルのNADHを酸化する.そのため,アルコール発酵と乳酸発酵の割合が減り,エタノールと乳酸の生産が減少する.硝酸呼吸能をもつ細菌は多く存在し,動物の口腔や腸内,海洋,湖沼など至るところに生息し,自然界の窒素循環に大きな役割を果たしている.無酸素状態の深海にも硝酸呼吸細菌が生息する.


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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:44:11