純生態系生産力[net ecosystem productivity]

 ある生態系全体での正味の乾物生産量または速度.NEP.総一次生産から植生・動物・微生物による総呼吸量を差し引いた生態系の炭素収支.または生産者による純一次生産から,消費者・分解者による従属栄養的呼吸消費を差し引いた収支とも表現される. NEPが正ならば大気CO2の正味吸収を意味し,負ならば正味放出を意味するため,グローバルな炭素循環における生態系機能の指標としてきわめて重要である.たとえば大気CO2濃度の季節変動は,陸上生物圈のNEPの季節変動を強く反映しているとされる. NEPは生態系の安定性とも関係しており,撹乱直後など若い遷移段階にある生態系は大きな正または負のNEPを示すことがあるが,十分に成熟した極相状態の生態系では物質収支が均衡するため年間のNEPはゼロに近くなる.渦相関法などの空気力学的方法によるフラックス観測では,生態系の正味CO2交換として測定される.厳密にはNEPは生理学的過程で決定される生産量であり,火災による燃焼や伐採による系外へのもち出しは含まない.


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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:43:01