色素体突然変異[plastid mutation]

  a.色素体ゲノムに生じた変異で,母性遺伝をする.多くはアルビノの表現型を示す.点突然変異から大きな欠失を伴うものまで,様々なものが知られているが,色素体ゲノムのコピー数が多いため,一部のコピーに変異が起こっただけでは表現型が現れない場合がある.
 b.広義には,色素体の分化や形態形成に異常を生じる遺伝的変異の総称で,変異を起こした遺伝子座は色素体ゲノムに限らない.色素体は,色素体ゲノムの100~150種の遺伝子の産物と,核の数千種の遺伝子の産物によって形成され,さらにミトコンドリアを含めたオルガネラ間相互作用の影響下にあるので,それらの遺伝子の中のいずれかが損なわれると色素体突然変異が生じると考えられる.葉緑体への分化と維持が正常に起こらない場合を特に葉緑体変異といい,多くはアルビノあるいは淡色(黄色)の表現型を示す.色素体変異のうち,アミロプラストの形成不全をひき起こすものでは,重力応答に異常が生じ,植物個体の形態形成にも影響を与える.かつてはaの用法が主流であり,核の遺伝子の変異で色素体に異常が現れる場合にはその旨を明記していた時期もあったが,現在は分野によってはbの用法も増えている.


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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:44:37