蛍光寿命[fluorescence lifetime]

  光によって励起された分子が蛍光を発光して基底状態に戻るまでの時間をさす.励起された分子がすべて蛍光を発して緩和するときの寿命を自然寿命といい,これに蛍光の量子収率(φf)を乗じたものが蛍光寿命となる. 蛍光寿命=自然寿命×Φf
 寿命は分子の環境に大きく依存する.クロロフィルaの自然寿命は約20ナノ秒といわれる.しかし,他の緩和過程,たとえば熱的な緩和(内部転換),エネルギー移動電子移動などが起こる場合,それらの反応速度が蛍光による緩和と競争するので,蛍光収率が下がり,その反映として寿命が短くなる.非極性有機溶媒中ではクロロフィルaの蛍光収率が0.3程度と見積もられ,観測される蛍光寿命は約6ナノ秒である.クロロフィルがアンテナとして機能しエネルギー移動を起こす場合,エネルギー移動の速度定数が圧倒的に大きいので,全体の緩和が影響され,蛍光寿命が1ピコ秒よりも短くなる場合もある.こうした性質を使って,エネルギー移動,電子移動の速度などを解析することが可能である.蛍光寿命が短いとき,定常系での蛍光収率は下がるが,時間分解蛍光を測定すると,励起直後の蛍光強度が高いという現象として観測される.

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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:44:42