適合溶質[compatible solute]

 高濃度に蓄積しても細胞毒性を呈さず,細胞の浸透圧の調整作用や,タンパク質や生体膜などの生体高分子の構造と機能の安定化作用をもつ細胞内液中の溶質.高濃度では細胞内の浸透圧調整にも寄与するが,細胞機能の保護作用がその作用の本質と考えられる.実際に,適合溶質の生合成系を導入したり生合成機能を強化した形質転換植物では,浸透圧の上昇に実質的に寄与しない低濃度の蓄積でも,ストレスからの保護効果が細胞レベルから個体レベルで観察される.生理pH下で電気的に中性(電荷をもたない,あるいは両イオン性)のきわめて水溶性の高い低分子量有機化合物であり,マンニトールなどの糖アルコール類,プロリンなどのアミノ酸,グリシンベタインに代表される四級アンモニウム化合物などに大別される.適合溶質の蓄積は典型的なストレス応答の一つであり,生物種により蓄積される主要化合物やそのレベルは異なる.細胞内蓄積の作用機作としては,生合成経路の活性化(異化経路の抑制を伴う場合もある),外界からの取り込み,あるいはその両方のプロセスがある.

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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:43:14