ガス交換 [gas exchange]

 大気と葉内との間において,光合成・呼吸・蒸散などの過程を通じて生じるCO2・O2・H2Oなどのガスのやりとりをガス交換と言う.これらのガス交換は,主に光合成を行なう植物の器官(特に,葉など)にある気孔を介して,拡散現象によって行われる.たとえば,日中の光があたるとき,植物は光合成と呼吸の両方を行う.このときは光合成で作られるO2のほうが呼吸で使うO2より多いので,気孔からCO2を吸収してO2を放出する.また,気孔を介して失われるH2O(蒸散)は、植物表面の温度を下げるとともに,根から水や栄養分を吸い上げる原動力となっている。一方で,夜など光が当たらないとき,植物は光合成をせず,呼吸だけ行うので,O2を吸収してCO2を放出する.
 ガス交換測定法は,葉や植物個体,植物群落の蒸散,光合成や呼吸速度を測定する一般的な方法である.通常,植物試料を光が透過する同化箱に入れ,同化箱に入る空気中のCO2濃度とH2O濃度,およびその流量,同化箱から出る空気のCO2濃度とH2O濃度を測定することにより,葉の光合成・蒸散速度・気孔コンダクタンス・呼吸速度を計算する.光照射下で葉はCO2を吸収し,O2を発生する.これらの比率はほぼ1:1である.また,気孔が十分に開いていると蒸散するH2Oの量はCO2やO2の出入りの数百倍である.したがって,空気に含まれる気体分子の数は同化箱から出る空気のほうが多く,その増加は数%のオーダーに達することさえあるので,その効果だけでも同化箱から出てくる空気のCO2濃度は低下する.したがって,H2O濃度の測定を同時に行うことはきわめて重要である.さらに,これらの測定と葉温の測定を同時に行うことによって,葉内(正確には気孔腔) CO2濃度を計算によって求めることができる.近年,個葉の光合成や呼吸速度は,開放系システムである携帯型の光合成測定装置(Li-Cor社のLI-6400,Heinz-Watz社のGFS-3000など)を用いて測定されることが多くなっている.これらの機器は光強度や温度,湿度,CO2濃度の制御が可能であり,個葉のCO2ガス交換反応を実験室内でも野外でも簡便に測定できる.

関連項目


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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:45:21