ショ糖[sucrose]

  スクロース,サッカロースともいう. C12H22O11,分子量342.30,β-D-フルクトースとα-D-グルコースとが結合したβ-D-フルクトフラノシルα-D-グルコピラノシドをいう.光合成能力を有するすべての植物および一部の酸素発生型光合成を行う原核生物中に存在する.特にサトウキビやサトウダイコンは多量のショ糖を貯蔵糖類として蓄積するので,工業的にはこれらの植物から生産される.甘みはD-グルコースの約2倍,D-フルクトースよりもやや劣る.還元力はなく,水に対する溶解度が高い(20℃で100 ml の水に203.9 g溶ける).希酸のほか,β-フルクトフラノシダーゼ(インベルターゼ), α-グルコシダーゼにより加水分解され,等量のD-グルコースとD-フルクトースを生じる.植物においてショ糖は貯蔵糖のほか,光合成産物の転流形態としてきわめて重要である.ショ糖は,調べられているすべての高等植物の篩管液中に含まれており,多くの種では篩管液中の糖はショ糖のみで,ときにその濃度は1モルを上回る.このようにショ糖は光合成産物の最も普遍的な転流形態であるが,その理由としては非還元糖で水に対する溶解度が高いこと,さらに比較的代謝されにくく生体内での安定性が高いことと関連するといわれている.光合成葉におけるショ糖合成は,主に三炭糖リン酸からヘキソースリン酸,ショ糖リン酸を経て細胞質で行われ,生じたショ糖は篩部に移行してシンク器官へと転流される.このショ糖合成系のキーエンザイムとしてショ糖リン酸シンターゼが重要である.一方,高等植物におけるショ糖の分解は主にインベルターゼスクロースシンターゼによって行われている.なお,シアノバクテリアなどの原核生物におけるショ糖の役割は,塩ストレス下での浸透調節やタンパク質の保護などが考えられているが,詳細は不明である.

関連項目


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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:44:37