ヘム[heme]

  ポルフィリン(ヘムBに見られるように全体が共役二重結合からできている)およびクロリン(ヘムD1に見られるように一部還元されて全体が共役二重結合になっていない)の鉄錯体をいう.ポルフィリンやクロリンには側鎖の違いにより多くの種類があるからヘムにも多くの種類がある.ポルフィリンの鉄錯体であるヘムにはヘムA,ヘムB(プロトヘム),ヘムC,ヘムO,クロロクルオロヘムがあり,クロリンの鉄鉗体であるヘムにはヘムD,ヘムD1がある.ヘムA,ヘムB,ヘムCは細菌から真核生物まで広く存在し,クロロクルオロヘムはある種の環形動物に存在する.また,ヘムO,ヘムD,ヘムD1は細菌にのみ存在する.生体内ではヘムは普通,タンパク質と結合してヘムタンパク質となっている.
 ヘムタンパク質には酸素運搬体(ヘモグロビンと考えてよい)とシトクロムがあり,酸素運搬体のヘムはヘムBおよびクロロクルオロヘム(このものが補欠分子族の酸素運搬体はクロロクルオリン)である.シトクロムにはヘムの違いにより多くの種類がある.ヘムAをもつシトクロムaa3,ヘムAとCをもつシトクロムa1c1,ヘムBをもつシトクロムbとシトクロムP450,ヘムBとヘムOをもつシトクロムbo,ヘムCをもつシトクロムc, ヘムCとD1をもつシトクロムcd1複合体,ヘムBとDをもつシトクロムbdなどがある.その他に,シトクロムとは呼ばれないがヘムをもつペルオキシダーゼがある.また,1分子中に24分子のヘムC(そのうち3分子は特にヘムP-460という)をもつヒドロキシルアミンオキシドレダクターゼがある.ヘムの種類を知るにはピリジンフェロヘモクロムの吸光スペクトルを測定してα吸収ピークの波長を調べる.ピリジンフェロヘモクロムのα吸収ピークの位置は,ヘムA(587 nm),ヘムB (557 nm),ヘムC (550 nm),ヘムD (613 nm),ヘムD1 (620 nm),ヘムO (553 nm)などである.(→ヘムタンパク質)
 ヘムは開環テトラピロールであるビリン色素(フィコビリン色素やビリルビン、ビリベルジンなど)の前駆体となる.

関連項目


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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:45:42