有機化合物の場合,リン光は多重度の異なるスペクトル項間で電子が低エネルギーレベル順位に落ちるときに発光する光.光の吸収により励起一重項状態に昇った電子が,項間交差により励起三重項状態に移ると,基底一重項状態への遷移は禁制されるため遷移の速度は低くなり,蛍光に比べて長い発光寿命をもつ(通常1ミリ秒~10秒).光合成系では,光合成細菌のアンテナ色素タンパク質複合体(LHC)に結合したカロテノイドは,バクテリオクロロフィルの励起三重項(T1)状態からのエネルギー移動によりT1状態を生成する.このT1からの発光がリン光である.カロテノイドのT1状態は共役二重結合数Nで異なり, 7,047 cm-1 (N=9:ニューロスポレン), 6,882cm-1 (N=10 : スフェロイデン), 6,854 cm-1 (N=11 : リコペン)と,いずれもバクテリオクロロフィルのT1状態(7,590 cm-1)の下に位置する.