三炭糖リン酸トランスロケーター[triose phosphate translocator]

  葉緑体内包膜に存在し,主に三炭糖リン酸と無機リン酸(Pi)の交換輸送を行う輸送体.三炭糖リン酸/リン酸トランスロケーター(TPT)とも呼ばれる.光合成炭素同化反応の主要な場である葉緑体において,光合成産物が最終的に葉緑体外に輸送される場合は,主に三炭糖リン酸(ジヒドロキシアセトンリン酸およびグリセルアルデヒド3-リン酸)あるいは3-ホスホグリセリン酸(3- PGA)の形で輸送される.したがって,光合成を継続するには基質としてPiの供給が必要である.三炭糖リン酸または3- PGA とPiは,本輸送体を経由して厳密な1対1の交換で輸送される.そのため,葉緑体内ではリン酸の総量(リン酸エステルに含まれるリン酸とPiの量の総和)は一定であり,光合成の誘導期には,主にPiの減少がATP合成反応を律速することで,光合成電子伝達系を抑制し,光合成の振動現象が起こる.
 本輸送体タンパク質は葉緑体内包膜タンパク質の10~20%を占める主要成分であり,色素体包膜の輸送体の中で最初にクローニングされ構造決定された.分子量は3万~3.5万,6回膜貫通型構造をしており,二量体として機能していると考えられている.なお,葉緑体や非緑色組織の様々な色素体には,本輸送体と進化的に同一起源で基質特異性が異なる様々な糖リン酸/リン酸交換輸送体が存在する

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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:43:58