固体壁に沿って空気や水などの流体が動くとき,壁面では流速が0となり,壁面に接するごく薄い層の中で流速が急激に増加する.この流体の層をいう.特に,固体壁が葉面である場合には葉面境界層,地球表面である場合には大気境界層と呼ばれる.境界層には層流境界層と乱流境界層がある.葉面の場合,葉面境界層の厚さは風速や葉の形状にもよるが通常1 cm以下であり,そのうち層流境界層の厚さは1 mmの桁である.大気境界層はほとんどが乱流境界層であり,乱流活動の状態にもよるが,通常数百mから2~3 kmの厚さをもつ.境界層の中では,流速や温度の勾配,物質の濃度勾配などの影響を受けて熱や物質の拡散過程が様々に変化する.このことは個々の葉と大気の間,植物群落と大気の間で行われる熱,水蒸気,二酸化炭素などの交換速度にも重要な影響を与える.