葉の老化に伴ってクロロフィルの分解に由来する葉の退色が起こるが,このとき葉緑体の老化が起こっていると解釈される.老化の原因としては,個々の葉の加齢によるもののみならず,栄養飢餓,光飢餓,さらには季節的なものがある.老化しつつある葉が落葉する前には葉緑体においては,光合成活動の停止,ラメラの崩壊,葉緑体リボソームの減少,好オスミウム酸顆粒(プラストグロビュル)の増加・増大,光合成装置の解体に伴うタンパク質などの高分子やクロロフィルなどの低分子の分解,窒素類を含む栄養素の回収が行われる.葉緑体の老化がある程度進行するまで,葉緑体と細胞質ゾルとの間の膜構造は維持される.老化時においては葉緑体プロテアーゼなどの各種分解酵素の遺伝子発現が活性化され,このなかには暗誘導遺伝子の一部も含まれる.植物ホルモンの中には老化を促進するものと抑制するものがあり,エチレン,アブシジン酸,ジャスモン酸は老化を促進し,サイトカイニンには抑制効果がある.