緑色の葉緑体をもつ不等毛植物の一群.黄緑藻ともいう.単細胞,群体,糸状体または多核嚢状体.葉緑体はふつう盤状で細胞中に数個〜多数存在するものが多い.色素体ERの外膜は核膜と広く連続するものもあるが,不明瞭なことも多い.多くはガードルラメラをもち,色素体核様体はその内縁に沿ってリング状に存在するが,ガードルラメラを欠き分散型核様体をもつものもいる.クロロフィルaに加えてクロロフィルc1,c2 をもつが,クロロフィルc量は極めて少ない(a:c 比は 55:1〜116:1).カロテノイドとしてはディアディノキサンチン,ディアトキサンチン,ヘテロキサンチン(heteroxanthin),ボウケリアキサンチンエステル(vaucheriaxanthin ester)およびβ-カロテンが存在する.フコキサンチンを欠くため葉緑体は緑色を呈するが,近年の研究から黄緑色藻の最初期分岐群であることが示唆されているプレウロクロリデラ類(e.g., Pleurochloridella; 暫定的にファエオタムニオン藻綱に分類されていた)にはフコキサンチンが存在する.ときに葉緑体中にピレノイドが存在するが,これを欠くことも多い.フシナシミドロ属の一種(Vaucheria litorea)で色素体DNA塩基配列が報告されている.
細胞はセルロース性の細胞壁をもつ.遊走子は細胞腹面から前後に伸びる2本の不等長・不等運動性鞭毛をもち,後鞭毛の基部に葉緑体内の眼点と相対する鞭毛膨潤部をもつ.フシナシミドロは眼点を欠く多鞭毛,多核性の特異な集合遊走子を形成する.遊走子や自生胞子によって無性生殖を行い,フシナシミドロでは特異な卵生殖が知られている.
多くは淡水域に生育するが,湿土上などから見つかるものもいる.
不等毛植物門の1綱,黄緑色藻綱(Xanthophyceae)またはトリボネマ藻綱(Tribophyceae)に分類される.プレウロクロリス(Pleurochloris),ボトリディオプシス(Botrydiopsis),オフィオキチウム(Ophiochytium),トリボネマ(Trinonema),フウセンモ(Botrydium),フシナシミドロなどを含む.遊泳性やアメーバ性の種も報告されているが,確実に黄緑色藻に属することが示されているものはない.色素組成や微細構造学的特徴,分子系統学的研究から黄緑色藻綱に分類されていた種のいくつかは真正眼点藻綱に移されたが,黄緑色藻綱内には真正眼点藻綱に移すべき種がいまだ多く残されていると思われる.