グルタチオン[glutathione]

  C10H17N3O6S,分子量307.3.グルタチオン(GSH)はほとんどすべての生物に存在するトリペプチド(γ―グルタミル-システニル-グリシン)であり,非タンパク質系還元型硫黄の主要な低分子物質である.GSHは,酸化され,グルタチオンジスルフィド(GSSG)を生成する。細胞内のレドックス恒常性に深く関わるため,GSHとGSSGを,還元型グルタチオンと酸化型グルタチオンと称することが多い。定常状態の細胞内ではNADPHとグルタチオンレダクターゼによりGSH/GSSG比は非常に高く維持され,多くの細胞ではGSSGは総グルタチオン骨格量の1%以下である. GSHはγ-グルタミルシステインシンテターゼとグルタチオンシンテターゼによるATP依存の2段階の反応によって合成される.植物細胞でのグルタチオンの生理機能は(1)細胞内硫黄貯蔵体, (2)生体内異物の抱合反応を触媒するグルタチオンS-トランスフェラーゼの基質, (3)細胞周期と分化や器官形成のレドックス調節, (4) 光合成の機能の調節,(5)アスコルビン酸酸化還元系と共役した酸化的ストレスに対する防御(アスコルビン酸ーグルタチオン回路),(6)機能性タンパク質の酸化還元調節,などである.グルタチオンの類縁化合物として,グルタチオンレダクターゼの基質となり,また農薬の分解にも関与するホモグルタチオン(γ―グルタミンル-システニル-β-アラニン)などを持つ一部の植物種もあるが、すべての植物種に存在するのはグルタチオンのみである。また,グルタチオンは、カドミウムのような重金属イオンをチオール基によって捕捉し,無毒化するフィトケラテン((γ―グルタミル-システニル)n-グリシン)の基質ともなる.


トップ   編集 凍結解除 差分 履歴 添付 複製 名前変更 リロード   新規 一覧 検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:43:01